ヒトとおカネの組み合わせは4パターン、幸せへの道は2通り

参考のために、記録しておきます。個人的には、株式市場で成功するためには、ふてぶてしさと厚かましさ、つまり「フツパ」が必要だと私は思っております。この著者の場合は、背景の野村證券という看板が前提になっていると思います。一向に構いませんが、私にとっては、「フツパ」が重要です。今は亡き「烈海王」を目指します(笑)。

ヒトとおカネの組み合わせには4通りある。そしてこの4通りしかない。
おカネがたくさんあって幸福な人(幸福な富裕者)
おカネがたくさんあっても不幸な人(不幸な富裕者)
おカネがなくても幸福な人(幸福な貧者)
おカネがなくて不幸な人(不幸な貧者)

金銭的に成功しても、精神的に不幸な人はたくさんいる。そいう人は「おカネでの成功者」ではあっても「幸福者」ではない。幸不幸は主観の問題であり、本人が幸福と思っていればそれは幸福なのだ。
よって、ほとんどの人々は1番目か3番目の形で幸福者になることを望む。また1番目と2番目の差、幸福になれる者とそうでない者の違いは、読者諸賢の関心を常に集めるところである。
そこで本稿では、まず1番目と2番目の違いが生まれる要因について述べる。次に、かつて左翼学生だった私自身が3番目を選ばなかった理由を説明する。最後に、現役ビジネスパーソンが「幸福な富裕者」になるための条件とポートフォリオ方針について触れてみたい。

私は仕事柄、これまでの人生で、資産運用に成功し財をなした富裕者をたくさん見てきた。
その中には、物心両面で成功しそれを持続できる人たちもいれば、一時成功しても没落する人たち、おカネがあっても幸福を感じられない人たちもいた。
彼らを分かつのは何であろうか?たくさんの「幸福な富裕者」と「不幸な富裕者」を観察することで、それぞれに共通する、何かしら一般的な傾向を見いだすことは可能だろうか。答えは是である。
簡単明瞭に言う。「幸福な富裕者」と「不幸な富裕者」この両者を分かつ最大の要因は、「運」をのぞけば、富を構築する過程やその後における「生活態度」にあった。
すなわち、1つには自律的で質実な生活態度。もう1つには最低限の法律・契約を必ず守るという規範意識。この2つの違いにほぼ全てがかかっている。
筆者の経験上、これがモロに市場活動の結果として反映される。市場からカネを獲って来ようとする心がけは、まず日ごろの生活態度から始まるのである。
もっとも私自身は「自律して生きている」と断言できるほど立派な人間ではない。ただ、そういうものを志向し生きている人間だというにすぎない。だがこの「志向」こそ、市場での誤りを少なくする投資の基本中の基本なのだ。
筆者がブラックマンデーや平成大バブル、リーマンショックにおいて事前に全株を売り抜けられたのも、大底を買って金融資産を構築できたのも、ひとえにこの生活態度のお陰であって、特別の放れ業ではない。質実な生活と常識があれば足りることである。

確かに運も大いにある。否、運ほど強いものはない、とも断言できる。現に私がこうしてココでイマ呼吸しているのも執筆しているのも皆「運」である。だが、こう言うこともできる。「運命は性格の中にある」のであり「人は自分の性格に合った事件にしか遭遇しない」のだと。芥川龍之介と小林秀雄の言葉である。

「不幸な富裕者」は、富を求める過程やその後の生活において態度を崩し、結果として法律か契約かのいずれかを、あるいはその両方を破ってしまう。またこのタイプは往々にして、常軌を逸して「貪欲」な傾向があった。これが良くないのだ。

ここで言う「貪欲」と、「利己心」は異なる。「利己心」は生物としてのヒトの遺伝子に組み込まれた誰もが持つものであり、決して悪いものではなく、むしろ健全なものだ。利己心を悪と考える人も多いが、それは大いに間違っている。そういう人は思考放棄状態で暮らしてきた人間である。

現実には「利己心」ではなく「度を超えた貪欲」がヒトを誤らせる。健全な利己心がなければ富裕者にも成功者にもなれない。アダム・スミスは18世紀末に「利己心が公共の利益を促進していく」として自由市場経済の原理を説いたが、この辺はしっかり理解しておかねばならない。

欲するべきはカネか自由か?幸福な富裕者と不幸な富裕者の違い
「幸福な富裕者」は、自由を求めて自律的に生きることを通し、自分なりの律法と健全な金銭観を持つに至る。だからこそ、カネを持った後も「カネの毒」に冒されないという共通点がある。「不幸な富裕者」にはそれらがないから不幸になる。

「幸福な富裕者」ないしそれを目指す者と、ジョージ・ソロスのように1兆円を慈善事業に投じたり、ジム・ロジャーズのようにオートバイで世界一周冒険旅行に出かけて各地で巨富を成したり、ジョン・テンプルトンのようにカリブ海で晩年を優雅に過ごしたり、そういう人々は違う。

「幸福な富裕者」は、巨万の富を目指して生きているわけではない。彼らが欲するのはズバリ「自由」である。私にしても、野村証券でヤリ手支店長だった若い頃から、78歳の現在に至るまで、目指すところは常にこの「自由」であった。
では「自由」とは何か。私の答えはいたって単純である。「やりたいことがやれること、かつ、やりたくないことをやらないでいられること」ただそれだけである。これ、自由の必要条件だ。
さらに、もう少し付け加えよう。やりたいことは結構あって、やらねばならないことはきわめて少ない、という状態がいちばん望ましい姿である。これ、自由の十分条件だ。

永井荷風は文学者としては多額の金融資産を持っていたことで有名であるが、それは「私の自由のためのカネだった」と書いている(『摘録 断腸亭日乗』岩波文庫 / 1987年)。彼はカネを作りながら文学をものした。彼は戦時中に、書きたくない戦争文学を書かないでいられる自由、やりたいことがやれる自由を求めて、おカネをつくったのである。

やりたいことは誰にでもあるはずだ。私もたくさんある。若い頃からやりたいことはたくさんあった。それは何かといえば、実はたいしたことではないのだ。いずれも、ささやかなものばかりである。
何回も行った海外の好きな国々や、いまだ行ってない秘境を自由な気分で旅したい。涼風爽やかな避暑地でゆったり読書をしてモノを書きたい。シングルプレヤーの座は保持できなくなったが、ゴルフの試合にもまだ挑戦したい。ケニアやタンザニアでのサファリや長野県での狩猟も続けたい。

あげればキリがないが、その多くはこれまでの人生の中でも、そして現在も実現中である。たとえば、海外旅行は好きなアフリカやアラビア地域を中心に年4回は行っているし、フライトは自由にパソコンを使えるようにビジネスクラス、ホテルは五つ星と決めている。狩猟歴は40余年で、毎冬の猟期に鹿や猪を2~5頭狩っている。ゴルフは――と書いていくと自慢話と思われそうなので、もうやめておこう。

だが、あなたにも、このような「やりたいこと」があるだろう。自分に置き換えて考えてみてほしい。要するに「自由」の選択肢を広げ、人生の可能性を広げるためには、おカネは多ければ多いほどよい、という順番である。私が「やりたいことをやれる自由」を謳歌できるのは、株式市場でつくってきた多少のおカネがあるからだ。

カネでは買えないものがあるのは確かだが、カネで買える自由や安定が非常に多くあることもまた事実であろう。カネがないとやりたいことは制限されてしまうし、第一に、心の安定も生まれない。古代の賢人曰く「恒産なくして恒心なし」である。

「不幸な富裕者」も、本来欲すべきはこの「自由」のはずなのだが、彼らは「カネこそすべて」の誤謬に陥いるため、幸福を実感できなかったり、自律的で質実な生活態度を維持できなくなって没落するのである。
自由と自律は不可分である。私はそれを、様々な書物――中学時代、英語教師に薦められた池田潔『自由と規律』(※1)、高校時代に読んだ井上靖『あすなろ物語』(※2)、大学のゼミ教授が三田評論に寄稿した、自由を求めて自律して生きる趣旨のエッセイなど――を通して学んだ。

富豪をめざす必要は私にはないが、カネをつくることは少しも悪いことではない。どころか、「度を超えた貪欲」の過ちさえ犯さなければ、その道程で自分が磨かれていくのである。

凡人に「幸福な貧者」は不可能、自然体の「幸福な富裕者」を目指せ
ところで、最初に挙げた4つのパターンのうち、(3)おカネがなくても幸福な人(幸福な貧者)は幸いなるかな、あえて利己心を抑制して精神の安寧を確保した哲人である。

京都郊外の1丈四方に棲んで静かに生きることを選んだ鴨長明や、ほとんど無銭のまま野たれ死に覚悟で作詩の旅に出た松尾芭蕉。あるいは架空の人物だが宮沢賢治が「雨にも負けず、風にも負けず……そういうものに私はなりたい」と書いた人――。
彼らのように、徹底的に金銭を無視して世間の片隅で静かに生きていけるなら、その人は確かに幸福であろう。

だが、その境地に達するよりは「幸福な富裕者」に達するほうが私には遥かにラクな道だと考えた。事実、その通りだった。私は大学2年の頃、「幸福な富裕者」と「幸福な貧者」のどちらを選ぶべきか大いに悩んだ。当時、左翼学生だった私は「幸福な貧者」にむしろ憧れる面すらあった。
その頃、のちに53年間の古女房となる幼な友だちは「おカネはなくても私たちが幸福と感じればそれが幸福なのよ」と哲学者めいたことを言ってくれもした。だが、私は教室でJ.M.ケインズと遭遇し、俄然おカネの世界に目覚めたのだった。

ケインズは官僚として学者として、また熱い恋の人として八面六臂の活躍をしたが、一方で投資市場の果敢なプレイヤーでもあって、個人で100億円ほどを儲け、母校ケンブリッジ大学の資金を運用して13倍に増やした傑物である。まさに「投機は自由のための彼の闘いであった」(R.F.ハロッド著『ケインズ伝』塩野谷九十九訳 / 東洋経済新報社 / 1967年)。

大学2年からの3年間、ケインズの生き方や理論に触れていくうち、私は左翼学生から「転向」して証券会社に進んだのであった。
「転向」は「変節」ではない。変節は自分自身の節義を破ることだから私たちは蔑視したが、転向はむしろ畏敬した。転向とは、自己の過ちを認識して自己批判した後に、方向を自ら変えることを宣言し進むことだからだ。
私はこの頃から、おカネと幸福との関係を真摯に考えるようになった。その結果が「幸福とは、やりたいことをやれて、やりたくないことをやらないでいられる自由な状態である」という明快な定義だった。そして、私には「幸福な貧者」よりも「幸福な富裕者」を目指すほうが、よほど容易かったのである。

だから、次頁で読者諸賢にご紹介する「幸せな富裕者」の生活態度も、鴨長明や松尾芭蕉になることに比べればはるかに簡単で、誰にも実践できるものとなる。

常勝の心得「自分の本業を知る者にこそ、相場の神は味方する」
ウォール街には「つむじ風の真ん中にいる者ほど風の方向が分からないものだ」と和訳された格言がある。
目的と手段を取り違え、おカネをつくることにのめり込んでしまう人がいるが、これは却って逆効果を生む。株式投資にのめり込んでも、そんなに儲かるわけではない。儲かるどころか逆に大損する場合も多い。
現役ビジネスパーソンのポートフォリオは、本業における年収が中心に据えられていなければならない。
読者諸賢は、何らかの本業を持っておられる方々が多いと推測する。もし投資活動でおカネを増やし、それでもなお、自分は本業を中心にこれからの人生を築き上げていこうと考えられるなら、それはめっぽう正しい「生活態度」と言える。
私は読者諸賢と、富裕者になる前はもちろん、なった後でも必ず役に立つ「常勝の心得」を共有したいと思って本稿に取り組んだ。

その心得とは「株と絵は遠くから見よ」の口伝である。私の現職時代の先輩は「株と女は遠くから見よ」と言っていたが同じことだ。
要するに、株式投資にのめり込みすぎることなく、本業を中心に自分の人生を設計し、一定の距離を置きながら株式市場で着実に資金を増やしていく。これこそが最も大事な「常勝の心得、第一」であり、「幸福な富裕者」と「不幸な富裕者」を分かつ最大要因であり、多くの「幸福な富裕者」に共通する生活態度なのである。

本稿は、何十万人に1人の幸運に遭遇する投資家や、特別に才能のある投資家を対象にしたものではない。普通の、常識的な、99.9%の大多数を対象としている。だから、少々の努力を継続できれば、という条件付きではあるが、誰にもできる方法を述べるようにした。
天は、滅ぼそうとする富裕者に、まずカネを与える。その人はカネの毒にあたって自ら滅ぶ。さすれば天は手が省けるというものだ。このことを、くれぐれもご注意いただきたい。

私もこまれで証券マンとして、企業経営者として、一投機家として、様々な誘惑と戦ってきた。その経験を生かし、読者諸氏が魑魅魍魎の誘惑に打ち克つ方法について、具体的な事例を交えてご紹介する予定である。
私の知る「幸福な富裕者」は皆、法律や契約を執拗なほど頑なに守ってきた。勘違いしないでいただきたいが、これは倫理観ではなくあくまで損得勘定の話である。
知ってか知らずか、契約を破って没落していく「不幸な富裕者」
私自身や、私の知る「幸福な富裕者」は皆、法律や契約を執拗なほど頑なに守ってきた。「お金持ちは狡い人間」と思っている人にとっては、もしかすると意外に感じるかもしれない。だが事実である。

なぜ「幸福な富裕者」は約束を守るのだろうか。それは、「幸福な富裕者」は、最低限の約束を守らなければ最終的にワリを食うのは自分であることを、真の意味で深く理解しているからである。だから法律や契約を遵守する。ゆえに怖いものがない。
勘違いしないでいただきたいが、これは道徳や倫理観ではなく、あくまで損得勘定の話である。「幸福な富裕者」は、経済合理的な選択として、いちど交わした約束を必ず果たす。

「幸福な富裕者」がすべての面で徹底的に損得計算ができるのに対し、「不幸な富裕者」はおカネの面でしか損得計算ができない、と言えば伝わりやすいかもしれない。
「不幸な富裕者」は富の構築過程で一時的にせよ法律や契約を破る。これが身の破滅につながる。そうでなくとも不幸に陥る原因となる。私はそのような人を数多く見てきた。

読者諸賢も一度は見聞きしたことがあるであろう卑近な例を挙げるなら、例えば「生前のあの人はお金持ちだったけど、死んだ後に子どもたちが相続争いで大喧嘩だそうだ。裁判で判事から和解を促されたのに、それでも高裁までいっちゃって。これじゃあ、おカネがいくらあっても不幸だネ」などという話だ。
このような悲劇は、その富裕者が民法上の相続ルールを(知ってか知らずかはさておき)“破る”ことで生じるのだ。彼は生前、子どもたちのために相続ルールに則った配分の遺言証書を作らなかった。すなわち法律と約束事(契約)を無視している。
それから、「あの人は気の毒にねぇ、お金持ちすぎて国税庁の調査が入ったそうよ。おカネがあってもこれじゃあ幸福ではないわネ」といったトラブルもそうである。税法という基礎的な法律を破っている。
不幸な富裕者が転落したとき、周囲の人間は決まって「あの人は気の毒に」と言う。これのホンネは「いい気味だ」である。だが、契約と法律を守ってさえいれば人様から「いい気味だ」と後ろ指を指されることはない。税務署も国税庁も警察も、何も怖くない。ヤクザや暴力組織すら怖くはなくなる。

私の経験では、これらが怖いと言う者はおしなべて、法律は守っても契約(約束ごと)を守らなかったり、逆に契約は守っても法律を破ったりしていた。
「法律と契約を守る者にとっては」という括弧付きで、おカネは多ければ多いほどよい。おカネこそは、私たちの人生を真に自由たらしめるカギとなるものである――
と、理屈ばかりでは退屈だろうから、次頁から筆者の実体験をご紹介しよう。自分が同じ状況に置かれたらどう対応するか、それを考えながらご一読いただきたい。

確実に儲かる「インサイダー取引」の誘惑に打ち克てるか?
もう10年以上前の話になる。私は、当時東証1部に上場していた殖産住宅相互<1920>の破綻が確実になったことを、その前々日に知る機会があった。
そして、その時の私の立場は第三次情報受領者であり、内部情報者(インサイダー)には該当しないように思えた。つまり「オレは何も知らなかった」とうそぶける程度のお膳立ては揃っていた。
これは千載一遇のチャンスだろうか、あるいは神の仕掛けたワナだろうか。読者諸賢ならどうお考えになるだろうか。

その時、殖産住宅の株価は30円。そこにカラ売りを仕掛ければ、労せず確実に2600万円ほどを儲けられる計算まではすぐに終えた。だが、もし情報取得ルートに問題アリと判断されれば利益は没収され、かつ反市場勢力として、私はすべての証券会社で取引ができなくなるだろう。
ここで私は、得意の損得勘定をした。むろん目の前のおカネだけではなく、人生すべての面を考慮した損得勘定である。
すると、証券市場は私にとって「宝の山」だ。何百兆円というおカネが、私に持って行ってもらいたがって山積みになっている、そんな場所だ。2600万円ぽっちの利益で、反市場の烙印を押されるのではワリに合うものか。
これが明らかになった。

それに、こういうときにカラ売りした口座はすべて調べ上げられる。よって、疑わしきは止めるべし、の鉄則に従って、きちんと思いとどまった。翌々日には、殖産住宅株は事前の情報どおり破綻して株価は1円になった。30円か29円でカラ売りしておけば1円で買い決済できたであろう日だった。あの情報を活用して一儲けした者も、あるいはいたかもしれない。それでもなお私には「幸福な富裕者」への道のほうがよほど重要に思えたのである。

あなたならどうする?本音は売りたいIPO株のロックアップ条項
またこんな話もある。
かつて筆者は、アライヴコミュニティ(2005年4月6日 旧ヘラクレス上場)の株主だった。保有株式はIPO前に上場担当の非常勤取締役としてお付き合いで保有した450万円分である。
その株式は、もし上場初値で売れば約3億円になる計算だった。だが同時に私は、上場後の半年間は売却しない契約を交わしていた。
これはロックアップ条項と呼ばれるもので、IPO直後に株価が値崩れすることを防止するための売却制限である。通常6ヶ月間が多い。とはいえ、いま売れば、450万円のお付き合い投資が3億円になる。本音では売りたい。誘惑である。売る選択もある。上場のために雇われた非常勤取締役に愛社精神はない。
このあたりの感覚は、経営者の方はもちろん、サラリーマンの方にもお分かりいただけるのではないだろうか。
ロックアップ条項を守るか、破るか。読者諸賢ならどうするだろうか。
この時も私はやはり、目の前のおカネだけではなくすべての面で損得勘定を行った。結果、やはり契約は守るべきという結論に至った。半年後、ロックアップが解除された時には、3億円は5000万円にまで減っていた。2億5000万円分は泡のごとく消え去ったのである。だが450万円が5000万円になったのだから、これはこれで良しとした。そしてそのおカネは、何らやましいことのない正当な報酬になった。
アライヴコミュニティがその後どうなったかを考えれば、もし、あの時契約を破って売っていたら、時節柄、闇の勢力に利益分を吸い上げられた挙げ句、それ以上の破滅的な結果すら招いたかもしれなかった。

株主激怒!アライヴの企てた「詐欺的増資」から身を守れたワケ
さらに私の事例を続けよう。これは読者諸賢も、経営者として、あるいは個人株主として、いつか遭遇するトラブルかもしれないので紹介する。
前述のアライヴコミュニティが上場した後の話だ。私は上場担当の非常勤役員を務めていたから、そろそろ一息ついても良いか、そんなふうに考えていた矢先の話である。
当時の社長がタチの悪い勢力に乗せられて、違法ではないけれども詐欺的な増資を計画した。
実例で言うと、当該株が時価45万円の時に、あるファンドに1株5万円で株式を取得する権利を与える。同時に、そのファンドは大株主である社長から株を借りて、5万円以上は利益になるのだから45万円から5万円までを売るという行為に出る。
当然、株価はストップ安も交えながら短期間で5万円まで下がるが、当のファンドにとってはこれが利益の源泉である。5万円で新株予約権を行使して株を入手し、社長に借りた株を返却すればいい。
かくして、会社の資金調達と引きかえに、1ファンドだけが巨富を得て、他の全株主には価値が10分の1になった株が残るばかりという、詐欺的スキームである。
これが不思議と犯罪にならなかった。日本ではこういう増資は一般の証券会社は幹事を引き受けない。筆者が非常勤役員を務めたアライヴではある外資系証券が引き受けた(その証券会社は後に破綻している)。
こういう増資自体は、東証1部のマトモな企業でもやった例は数社ある。ただし、それらには安く取得した株を売らないで保有し続け、既存株主に迷惑がかからないようにする配慮があった。
さて、非常勤役員を務める企業で、まさに一般投資家を欺く詐欺的増資が行われようとしたとき、私はどのように自分の身を守ったか。具体的にはこうである。
まず私は、取締役会においてこの方式の増資に反対を表明し、それを議事録に明記するよう要求した。これは当然のことだ、一般投資家をカモにすると分かっていて、このような増資を認めてよいわけがない。
それから、その議事録を公証役場へ持って行って「確定日付」を取った。これはその議事録が確かにその日に存在したという存在証明を、公証役場という公的機関がしてくれる制度だ。1頁700円でやってくれる。
「そんな議事録はなかった」「あとで作成したのではないか」と難癖をつけられないようにするための防御策である。
後日、私はそれを携えて株主総会に臨んだ。他の役員が、激昂した株主たちから何時間も釣るし上げられる中でも、その書類を提示できた私に怖い物はなかった、株主も納得した。
さらに後日。所用で某証券会社に立ち寄った折、そこの支店長からヒソヒソ声で「折り入って話があるから支店長室に来てくれ」と呼び止められた。応じると、その支店長は「東証から通達があって、山崎和邦氏は反市場勢力企業の役員だから、今後、当社の取引口座は利用できなくなった」旨を言いにくそうに私に告げた。
だがその時も、私は携帯していた例の確定日付つきの議事録を提示して、直ちに取引停止を解除させることができた。間が悪くヘンな企業の非常勤役員だったからとて、東京証券市場という宝の山から締め出されてはかなわない。

時代を越えて変わらない「幸福な富裕者への道」 7つのポイント
アライヴコミュニティをめぐる一悶着は、一歩間違えれば筆者の人生を大きく左右する(それこそ不幸へと転落させかねない)事案だったが、「幸福な富裕者」として「法律と契約は必ず守る」という心得のおかげで事なきを得た。
これらの事例からも分かるように、「幸福な富裕者」が法律や契約を必ず守る意味、これは単に法律の条文を守る、期日を守るにとどまらない。
一言で言えば、私の知る「幸福な富裕者」は皆、共通してよく勉強するし用心深い。「不幸な富裕者」は用心を怠るから没落して不幸に転落する。ほぼこれである。
「用心深さ」は「疑い深さ」とは異なる。物事はすべて信ずることから始まり、信じなければ何も生まれない。「用心深さ」と「疑い深さ」は似て非なるものだ。
この健全な用心深さを身につけるには、倫理観ではなく、あくまで損得勘定の立場から「法律と契約を守る」ことが大切だ。
知らず知らずのうちに法律や契約を破る者、無視してしまう者に欠けているのは、道徳心ではなく損得勘定であることが多いからである。「幸福な富裕者」の規範意識は、倫理という「感情」ではなく「ソントク」という「勘定」を拠り所とする。読者諸賢には、ぜひこれを心得ていただければと思う。
最後に、前後編で述べた要点をまとめて本稿を終わろう。

「幸福な富裕者への道」7つのポイント
幸福とは「やりたいことをやれて、やりたくないことをやらないでいられる」自由な状態である
おカネではなく自由を欲せよ。おカネは自由のための手段である
自律的で質実な生活態度を維持せよ。自由と自律は不可分だ
本業における年収をポートフォリオの中心に据えよ
法律や契約、他者との約束事は必ず守れ
規範意識は倫理観ではなく経済合理性をその拠り所とせよ
目先のおカネだけでなく将来を含むすべての面で損得勘定せよ




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この記事へのコメント

- おじさま - 2015年11月14日 00:04:37

これだけの文章は日ごろから書き溜めておいたものでしょうね、一つ一つ納得してしまいます。 かなりの境地に達していらっしゃると思います。
最近の哲学的 人生論の中で一番の文章ですね。 プリントアウトして熟読させていただきます。
そうすれば ninjyaさんの考えがもう少しわかって来ると思います。  最後の7つのポイント 全くその通り まだ若輩ですが大納得。 折に触れて読み直してみようと思います。ありがとうございました。

- NINJA300 - 2015年11月14日 05:53:44

いつもコメントありがとうございます。
わたしも参考になりました。

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NINJA300

Author:NINJA300
ASEAN在住日本人の資産運用ブログ。NINJA250からNINJA300へ排気量アップしました(2013/11)。

最近気付いた点は、自分が永遠に"a bud looking for bloom"であり、「捨石(a stepping stone)」であるということです(2015/03/26)。

☆☆☆ムーンフェイズ/月齢☆☆☆




☆☆フライング・トゥールビヨン☆☆



The Pirate's Code 1: Take every thing you can, give nothing back!

※データ記載には注意を払っていますが一人で書いておりますので、間違いが全くないというわけはないと思います。若し、間違いにお気づきになられた方はご一報いただければ幸甚です。また、ご承知のように、投資は全て自己責任ですので当ブログは一切責任を負いません。

http://ninjafighter.blog.fc2.com/blog-entry-1.html

※また、徹底して日教組が大嫌いです。天敵だと思っていますので宜しくお願いします。

なお、プレビューは天龍寺の雲龍画。日本は「龍国」です。
http://www.rinnou.net/cont_03/10tenryu/

※最後に、NINJA300は完全に「アマゾン」「楽天」等の回し者で、アフィリリンクをクリックすると商品ページに飛んで購入額のわずか数%の"under the table"をもらえる約束になっています。したがって、数円単位でもNINJA300を儲けさすのがムカつく人はどうか買う時は自分で「アマゾン」にアクセスをお願いします。

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